Wikipedia、薬に関する項目は重要情報の抜けが多いとの調査結果
ITmedia News (Reuters) 2008/11/26
ニュースの原文はWikipedia often omits important drug information: study Reuters 2008/11/25。原著は The Annals of Pharmacotherapy の電子版 2008/11/18 号に掲載された Nova Southeastern University というアメリカの大学の薬学部のグループによる報告「Scope, Completeness, and Accuracy of Drug Information in Wikipedia」。論文の要約を読んでもどの言語版についてなのか書かれていなかったが、まず間違いなく英語版ウィキペディアに関する調査だろう。報告の内容はタイトルの通り。医薬品について内容を検証したところ、重要な情報が書かれていない項目が他の医薬データサイトに比べて多かったという。
ウィキペディアの「なかのひと」は重々承知のことと思うが、ウィキペディアは(まだまだ)完全ではない。これまで言われてきた通り、ウィキペディアの記述を(ウィキペディアに限らず様々な情報源を)鵜呑みにするのは危険だ。特に医薬系の情報だと、最悪の場合、(例えばアレルギー反応についてなど)情報が足りなかったことにより、生命に危険が及ぶ可能性がある。もちろんウィキペディアはそのコンテンツを完全に近づけていく努力が必要だが、日本語版では医薬関連項目には{{medical}}テンプレートが貼られ「ご自身の健康問題に関しては、専門の医療機関に相談してください。免責事項もお読みください。」という文面が表示されている。しかし、先ほどいくつかの項目を見てみるまで知らなかったが、英語版ではどうもこのような注意書きはないようだ。
このようなニュースが出ることで、「だからウィキペディアは危険だ」と受け取られると残念だが(そのような短絡的な受け取り方こそがメディアリテラシーの欠如を端的に示しているように思う)、逆に読者に注意を促し、メディアリテラシーが高まればと願う。今回の調査をした研究者も述べているように「Wikipediaはインターネットで調べものをするときの良い出発点になる」。ただし「どんなトピックでも完璧な説明が載っていると考えるべきではな」い。危険なのは情報を鵜呑みにするという行為だ。また専門家は専門家としてアクセスすべき情報源がウィキペディア以外にあるだろう。
一方、専門家は注意を促す以外にも、専門家としてできることがある。Gene wiki のように参加して正しく編集してしまうことだ。ウィキペディアは紙媒体と違い、訂正も速い。実際「研究者らはWikipediaの調査時点の項目を90日前のものと比較し、スコープが「著しい改善」を示したことも発見し」ている。もう一点、この報告で良かったことをあげておこう。「研究者らがWikipediaで見つけた答えはいずれも事実の誤りがなかったが、MDR(専門家によるチェックを受けているサイト)では不正確な答えが4件あった」。情報が足りなかったのは残念だが、誤りがなかったというのは良いことだ。
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